「こわ」
「子どもっぽいことしないでよ」
「どっちが?」
 
腕組みをして、進もうとした私の前にずいっと立ちはだかられる。

「トイレ行きたい」
「一緒に話しながら行く?」
「行かない」
 
淡々とした言い合いだけれど、廊下を歩く同学年の生徒に、ちょっと怪しげな顔で見られる。
このキャスティングと、この言い合いの雰囲気が、異色なのだろう。
今すぐ、この場から離れたい。

「宇崎さん」
 
その時だった。
ちょうど通りがかった園宮くんが、私の腕を引いて、
「先生に呼ばれてるから、行こう」
と声をかけてきた。