「コツコツできるのも才能だよ。うちらにはないんだもん、そんな才能」
「ちょっと美月。一緒にしたっしょ、私も」
「尚ちゃん、私とどっこいどっこいじゃん、成績」
 
またもや、美月と尚美は小競り合いをしている。テスト前日もこんな調子だと、結果が目に見えている。

「ちょっとトイレ行ってくる」
 
話が盛り上がっている中、私は席を立ち、教室を出た。
廊下をトイレまで歩く間、ポケットから携帯用の英単語帳を出し、裏表で確認しながら足を進める。

「……っ」
 
ちょうど他の教室から出てきた生徒とぶつかりそうになり、私は慌てて身を翻した。
と同時に単語帳が床に落ちてしまう。
その人の足元に落ちたため、「すみません」と言って顔を上げると、相良くんだった。