なるほど、あの発言も転校生だからだと言われればしっくりくる。
部活にもまだ入っていなくて、家に帰ろうにもバスの時間までが長いものだから、ゆっくりできる場所を探していたのだろう。

標準語だったから、東京から来たのかな。

「…………調律……」
 
ぼそりと呟き、してくれたのだろうか、と思う。

同学年で3組の転校生だということがわかり、ふたつ隣の教室まで見に行ったけれど、転校してきたばかりだというのにすでにクラスの男子に囲まれて笑っていて、声をかけることができなかった。
放課後も電車の時間を考えると、旧音楽室に寄ることができなかった。

自分から催促したような形になっていたのに、薄情者だと思われただろうか。

「…………」
 
週末を挟むから、どちらにしろ月曜日にならないとなにもできない。
私は車窓に後頭部をコツリとあてて、鼻から小さく息を吐いた。