「あら、またピアノ教室お休みしたの?」
 
翌日の文化祭も無事に終わり、家に帰ると、お母さんが驚いた声で言ってきた。

「うん、文化祭で疲れて。大丈夫、ちゃんと電話したから」
「先生はなんて?」
「わかりました、って」
「そう……」
 
私はお母さんの心配そうな顔から目を離して、すぐに階段をのぼり始めた。

本当は、先生にいろいろ言われた。
コンクールがあって以来、一度も行っていないからだ。

『理穂ちゃん、失敗を悔やむ気持ちもわかるけど、それを繰り返して、場慣れしたり上達したりしていくのよ』
『ブランクが空くと、どんどん指が固くなるの。今まで積み重ねてきたものがもったいないわ。早めに出てきてちょうだいね。先生は待ってるから』