唇を震わせてそう言った途端、ポロポロとあとを追うように涙が落ちた。
きゅっと口を閉じてこらえようとするも、涙が視界に亀裂を作っては壊れ落ちていく。

自分でも信じられなかった。
人前で泣くなんて。
 
彩佳は、「ふぅ」と微笑み交じりのため息をつき、私の背中をトントンと優しく叩く。

「……ごめん、本当は自然とそう言ってもらいたかったんだけど、急かしちゃって」
「ううん……ちが……」
 
何度も目をぬぐい、気持ちを紛らわして落ち着かせようと、いろんなところから聞こえる音楽に意識を傾ける。

「ねぇ、もしかしてそれさ、相良くん、関係あるの?」
 
顔を上げ、なんで? って表情で聞くと、
「さっきのふたりの空気もだけど、美月がする相良くんの話題に全然乗ってこないし、いつも相良くんと無理して目を合わさないようにしている気がして」
と言われる。