「……兄弟?」
 
鳥肌が立つような演奏が終わった時、私は感嘆のため息をつき、一時停止ボタンを押して彼の顔をまじまじと観察した。
 
いや……違う、本人だ、たぶん……。
 
そう確信した時に、演奏への感動とはまた別の鳥肌が体を駆け抜けた気がした。

「ピアノ……弾いてるじゃん」
 
あの、たどたどしい指が脳裏によみがえる。

真剣な瞳。
ふたりで合わせた時の、達成感に満ちたものすごく嬉しそうな顔。
毎回一緒に弾こうとねだる子供っぽい言動。

まるで初心者のような振る舞いすべてと、私の……なにも知らなかった私の、上から目線。