「え?」
 
部屋に戻ると、つけっぱなしだったテレビから、さっきとはまったく違う音楽が流れていた。

いや、同じショパンのエチュードであることはたしかだ。
けれど、なんだろうか、画面からピアノの音と同時に風が吹いたかのような錯覚がしたのだ。

これは……あれだ、以前ピアノ教室で聞いた中学生の女の子の演奏を思い出すような、いや、それ以上の衝撃だ。

コト……とコップを置いた私は、その弾き手の中学生に注目する。
男の子だった。
黒髪を垂れてこないように固め、中学生ながらスーツをきっちり決めた……。

「……相良くん?」
 
私は、目を疑った。
その男の子の顔をよく見ると、眉も目も少しだけ吊ったようなキリッとした……相良くんと瓜ふたつの顔をしていた。