うまくいかない。
なにもかも、思うようにできない。

夏までは平和だったんだ。こんなふうに取り乱すことも、心を揺れ動かされることも、自分で自分がいやだと思うことも、他人が疎ましく思うこともなかった。

それなのに、相良くんが転校してきてから、彼と旧音楽室で会うようになってから、全部、全部……変わってしまった。

「……なんなの」
 
呟いてみたところで、答えは出ない。
ただ、小石を踏み潰すように歩く足元から、ギリッと音が響くだけ。
 
単純だと思っていた世界が、自分が思っていたよりももっと複雑になっていく。
クリアだと思っていた周囲の人たちとの関係性の色が、どんどん濁っていく。
 
私は、自分で自分を持て余すという経験を、今、初めてしていた。