わざとらしくプイッと反対方向を向いてそう言った相良くん。
私は、その腕をグーで叩く。

「いてーな、おい」
　
すると、相良くんも私の下ろしている髪をひと束、つんと引っ張った。

「痛いよ」
「ピアノの時しかウサギ髪にしないんだ？」
「離してよ」
　
今度は持っていたバッグで彼のスネを打つ。

「めっちゃ痛いって、それ」
　
その相良くんの声が大きかったせいで、靴箱のほうから出てきた数人の女子生徒がこちらに注目した。
見ると、私と同じクラスの子たちで、私と相良くんのツーショットが意外だと言わんばかりの表情をしている。