相良くんのひとつひとつのセリフに過剰に反応してしまい、イライラが募る。
でも、なににこんなにイラついているのか、自分でもわからない。

「もう帰るの?」
「今日は水曜だもの。英会話があるの」
「文化祭の準備は終わったんだ」
「終わった。そっちはどうなの?」
「終わったよ。今から音楽室行くところだけど、ウサギが帰るとこ見かけて、追いかけてきた」
「追いかけてきても、どのみち今日は英会話があるから行けないし」
「まぁ、そうなんだけど」
 
相良くんは鼻頭をポリポリ掻きながら、私の隣に立った。
灰色の薄い雲が、空を広く覆っている。

「英会話サボってピアノ弾かない? 一緒に」
「弾かない」
「あっそ。クソ真面目」