放課後、私は昇降口で靴を履き替えていた。
今日は英会話教室の日だ。
今から駅に向かって、電車に乗って街までいかないといけない。
「理ー穂ちゃん」
昇降口を出て軒下に出ると、後ろから声をかけられた。
振り返ると、こちらに歩いてくる相良くんだった。
「なに?」
「なんで来なかったの? 昨日も一昨日も、音楽室に」
近付いてきながら話し出す相良くんは、上履きのままだ。
「文化祭の準備があるでしょ? 私も相良くんも」
「俺、行ってるのに、その後で。ピアノひとりで弾いても面白くないんだけど」
「なんで音楽室で風船作ってるの? って言ったの、相良くんじゃん」
「そんなの気にしてなさそうだったの、ウサギじゃん」
「ウサギって言わないでよ」
「はいはい、理穂ちゃん理穂ちゃん」