私は詳細を説明したくはなかった。
なぜなら、放課後にひとりでピアノの練習をしていることを知られたくないからだ。

邪魔をされたくないとか、他の人に広めてほしくないというのもあるけれど、なにより、努力をしていることを悟られたくなかった。
 
それより、彼の顔はどんなだっただろうか。

気だるげで、面倒くさそうな表情しか頭に残っていないけれど、ほんのり日焼けした肌は男にしてはキレイなほうだったし、鼻筋も通っていて、大きめの口も形はよかった気がする。

「まぁ、イケメンの部類には入るかな」
「そうなんだ!」
 
美月の表情が輝く。そして、急にヒソヒソ声になって、
「じゃあ、園宮くんとどっちが男前?」
と聞いてきた。

私は、なんとなくいやな質問だな、と思いながらも、
「そこは……好みの問題でしょ」
と返す。

内心は、断然園宮くんだけれど。