相良くんの名前が出て、ちょっとびっくりした。

「そうなんだ」と相槌を打ちながら、自分が知らない彼のことを美月が知っていることに、なんとなく複雑な思いが生じる。

「ていうか、相良くんて、あっという間にいろんな人と仲よくなってるよね。二学期から入ってきたのに、もうクラスの人気者らしいしさ」
「あぁ……」
 
彼の人懐っこさと図々しさを思えば、頷ける。

「理穂子が“こんな人いる?”って聞いてきたばかりな気がするけど、早いもんだね」
「……うん」
 
そういえばそうだった。
九月の初め、一番最初に旧音楽室で彼に会った翌日に聞いて、転校生かもって教えてくれたのは彩佳だった。