「え? そこから聞こえるの?」
「うん。たぶんだけど」
 
立ち上がってこちらまで歩いてきた彼は、私の横に立つ。
いつも座って話をしているから、隣に立つ彼との身長差に男の子だということを妙に意識してしまい、一歩だけ横にずれた。

「あぁ……お宅の委員長ね」
 
相良くんは「ふーん」と顎をさすって、細い目で弓道場を見下ろす。

「報われない恋をしてんだね、まだ」
「だから、恋じゃないってば」
「憧れ?」
「まぁ……それに近いっていうか……」
 
言いながら、園宮くんは美月のことが好きだということを思い出した。
そして、思い出したことで、今の今まで忘れていたことに気付く。

……というか、あれ?