「一緒に合わせてよ」
「あー……っと、うん。でも、相良くんが弾いてるのは右手パートだから、左手同士になっちゃうけど」
「こっちに回ればいいじゃん」
 
そう言って、反対側のスペースをポンポンと叩く相良くん。
私は、言いなりになるのは癪だな、と思いながらも、「はいはい」と言ってそちらへ移動する。

「あたるから、もっとそっち詰めてよ、相良く……」
「せーの」
 
有無を言わさずに始められて、私は慌てて左手のパートを弾いた。
音数が少なく、テンポの遅い三拍子が始まる。

気持ちとは裏腹に、落ち着いたメロディだ。
ゆっくりと、愁いを帯びたようなメランコリックな曲調に、いやでも息を整えずにいられない。