ひとりっ子だということもあってか、お父さんが仕事の話か政治の話をしない限り、話題は私のことに集中することがしばしばだ。

だから、私の成績も、学校や個別指導の塾での様子も、ピアノや英会話の上達具合も、お父さんお母さんふたりともにしっかりと把握されている。
 
負担ではない。
なぜなら、それがいい緊張感に繋がって自分自身を律することができるし、それゆえにしっかりと期待に応えられているし、その結果褒められると次も頑張ろうという、プラスの循環が出来上がっているからだ。

大事にされているという自覚もある。自分は幸せ者だ。

「コンクールが楽しみだな。おじいちゃんおばあちゃんも見に来れるみたいだし、そうだな、他にも……」
 
そう言いながら、おじさんやおばさんたちの名前も挙げて、呼ぼうか、と笑うお父さん。