私はふたりの間の座面スペースを、ボスンと拳で打ちつけた。
相良くんと話していると、いやでも子どもじみた自分が出てくる。

「私はっ、私はちゃんとできるはずだったの。ちゃんとできてたの。それなのに、あんな、途中で手が止まって……」
「手が止まったんだ?」

「へぇー」と、相良くんはソファーの背に肘をかけて頬杖をつく。

「お父さん……私に幻滅してた。成績が下がって、それだけでも呆れられてたのに、ピアノまで全然で……」
「ねぇ」
「見放された。なにも……なにも取り柄がない、自慢なんかできないような娘だって……きっと、そう思って……」
「おいってば」
 
パチンと、急に相良くんが両手で私の両頬を挟むように叩いた。

「……イタ」
「だからさ、ウサギは表面的なんだよ」
 
そのまま彼の真正面にされた顔。至近距離の相良くんの目に、眉を下げた私が映っている。