なにが、私をこんなふうにしたんだろうか。
ちょっと前までの平穏な日々はどこに行ったんだろう。
今じゃ、成績も落ちて、友人も妬ましくて、ピアノでも大恥をかいて……。
 
あれ? 
私、今……なにもない。
 
そのことに気付くと、急にこのソファーがぐにゃりと柔らかくなり、ずぶずぶとどこまでも沈んでしまうような恐ろしい心地がした。
私は慌てて目を開けて、ちゃんと自分はここにいる、と確認する。
 
私を私たらしめていたはずのものが、一気にあやふやになった気がして、自分のよさや取り柄が、それこそ砂が風に舞うようにサラサラと散っていく。
周囲から認めてもらえているはずだったのに、なにも問題のない毎日を送っていたはずだったのに、その足元がグラグラに揺れる。

「……っ」
 
泣きたいような気持ちになってきた私は、思わず両手で顔を覆った。