「おはよう、理穂ちゃん。どうだった? コンクール」
 
月曜日は雨だった。
校門に入って校舎の昇降口に向かっていると、真っ赤な傘をさした美月が、笑顔で肩を叩いてきた。

「おはよう。うん。まぁ……」
「お疲れ様。次は文化祭に向けて頑張ろうね」
「うん」
 
美月は、ストライプ柄の新しいシュシュで結った髪を揺らし、
「ねぇねぇ、これ、理穂ちゃんと一緒に駅前のあの雑貨屋で買ったやつ。つけてきちゃった。似合うかな?」
と聞いてくる。

「あぁ、うん。似合うよ」
 
私はろくに見もせずに、愛想笑いを返した。
頭の中では、土曜日のコンクールのことが繰り返し再生されていた。