翌々日の土曜日は、コンクール当日だった。
コンクールは本選ということもあって、この田舎からは車と新幹線を乗り継いで二時間ほどの距離の、立派なコンサートホールで行われる。
当日、早起きしてお父さんとお母さんと一緒に向かった私は、幾度とあったコンクールの中で一番気が重かった。
食欲もなく、着いた時には会場の人の多さに立ち眩みさえした。
「おじいちゃんたちも、もうすぐ着くそうだ。応援が増えてよかったな。リラックスして頑張れよ」
「普段どおり弾けば大丈夫だからね、理穂ちゃん」
お父さんとお母さんの言葉に頷いて、私は控え室へと向かった。
冷たい汗が額を伝い、自分を落ち着かせるために、大きな深呼吸をする。
「……大丈夫」