その顔は、複雑さと、うっすら落胆を滲ませていて、私はなんだか“ごめんなさい”と言ってしまいたい気持ちになる。

「なにか原因があるのか?」
「べつに……自分の油断だとしか……」
「それなら、なんでそんな油断が生じたんだ? そんなに下がるほどの」
 
ほら、相良くん。全然“それだけ”のことじゃないよ。
思ったとおり、お父さんにとっても一大事だ。

「ごめんなさい」
 
さっき言うのをためらった言葉が、するりと私の口をついて出てくる。

けれど、お父さんは、
「謝るのはおかしいだろ。勉学に励むのは、未来の自分への自己投資だ。自分のためだろう」
と、もっともらしいことを言ってきた。
 
お父さんは声を荒らげてなどはなく、まるで諭すような口調だ。
けれど、自分でもそんなことはわかっている、とモヤモヤした気分になる。