尚美と美月が言い合いをしている横で、彩佳が、「またやってる」と微笑みながら腰に手をあてる。
私も微笑んではいるものの、心の中は妙な苛立ちと焦りで落ち着かなかった。 
 
美月はなにも悪くないのに、美月はこんなキャラだってもともと知っててなんとも思っていなかったのに、どうしてもイライラする自分を止められない。
それに……。

「明後日の土曜日だったよね? コンクール」
 
彩佳の言葉に、私はビクリと肩を上げた。

そうなのだ。
コンクール目前でこんな心持ちでいることへの焦りが、私をさらに身動きを取れないようにして悪循環になっていた。
ただでさえ、自分の納得できるような弾き方ができていなくて、不安定なのに……。

「そうだよ」
「どう? コンディションは」
「ぼちぼちかな」