翌週の水曜日、英会話が休みになった私は、放課後に旧音楽室へと向かっていた。

今週は、金曜のピアノ教室も合わせれば、毎日ピアノを弾くことができる。
けれど、足取りは重かった。
 
音楽室の中に足を踏み入れ、閉まっているドアを開放して埃っぽい空気を入れ換える。
昨日も一昨日も同じだった。
だって、いつも先に来ている相良くんが来なくなったのだから。
 
セッティングを終えた私は、いつものようにピアノを弾き始める。
変イ長調、音階も記号もペダルを踏むタイミングも、忠実に、正確に、間違えないように。
 
上っ面だけの楽譜をなぞったような音楽が、開けたピアノの屋根を抜けて空しく音楽室に響いた。
そう聞こえてしまうのは、なぜだろうか。