「成績が……下がったの」
「は?」
「だから、今回のテストの結果が悪かったの」
 
彼は体を起こして、私のほうへ向き直る。
ピアノ椅子がギッと音を立てて、ちょっと揺れた。

「それだけ? それだけで、そんな落ちてんの?」
「そうよ」
 
相良くんの言い方にムッとしてしまい、今度は私のほうが体ごと横へ向ける。

『それだけ』なんて失礼だ。人が落ち込む理由なんて、痛みの感じ方がみんな違うのと一緒で千差万別なのに。

それに、相良くんが何度も理由を聞くから、意を決して告白しているというのに。