「そっかー、それでも一桁なんだろうな。ずるいなー」
「こらこら、美月。人にズケズケとそういうこと聞くもんじゃないよ」
 
横から入ってきたのは彩佳。
彼女は優しい性格だから、私の異変に気付いたのかもしれない。
けれど、なんとなく察してそんなふうに気を使われることさえも、今の自分にとってはいやだった。

「彩ちゃんはどうだったー?」
「だから、聞かないでって言ったばかりでしょ」
 
呆れたように笑いながら、美月にゆるいゲンコツをする彩佳。

美月は、「はーい」と言って、今度は尚美の席のほうへ行った。
おそらく尚美にも順位を聞くのだろう。

「理穂子、顔色悪いけど大丈夫?」
「うん……大丈夫」
 
そう返しながらも、心は穏やかじゃなかった。
こんな成績、親が見たらどう言うんだろう。
不安で唾さえも飲みにくい。