私は三組ではなく一組の副委員長だというのに、テストまでの間、成り行きで相良くんに数学を教えることになった。
バスの時間を一便ずらした彼は、「人に教えることは、自分がどれだけ理解できたかという復習にもなる」とどこかから借りてきたようなことをえらそうに言って、あたり前のように私を利用する。
けれど、私はそれがさほど苦痛ではなかった。
たしかに復習にもなるし、少し教えた後は自分のテスト勉強もできたからだ。
「あれ? 字は右手なんだね。スマホとかピアノは左手なのに」
「そう。字だけはね」
「顔に似合わず達筆だよね、相良くん」
「顔に似合ってたら汚い字のはずだって?」
「そんなこと言ってないよ」