「でも、嫌われたくなかった。褒められたかったんだろうな、たぶん……」
 
ぼそりと呟かれたその言葉。

私は、聞こえなかったふりをして彼を撫でる手を止め、
「それで、えっと、今一緒に住んでるのは……」
と話題を少しずらした。

でも、聞いた後で、この質問も微妙だったかもしれないと反省する。

「ばーちゃんと母さんと自分の三人。てか、いいよ。そんなに気を遣わなくても。ウサギの優しいとこかもしれないけど、普通でいい」
「……そう? なの?」

「そうなの」と言って、ガバッと体を起こす相良くん。
いつもの得意げな顔に戻っていて、私を至近距離で見てニッと笑った。

「それはそうと」
「え?」
「中間の範囲の数学、教えて。副委員長」