しばらく、雨音だけが沈黙をつなぐ。

相良くんの向こうに向けた顔の表情は、窓に映って見えそうでいて、やっぱりよくわからなかった。
もしかしたら、なにかいやなことを思い出させてしまったのかもしれない。

「俺んちの母さんは、気が強い。ばーちゃんはあんなに穏やかなのに、意味がわからん」
 
だから、相良くんのほうからそんな話が出て、ちょっと驚いてしまった。

「ハハ。そうなんだ」
 
とりあえず相槌を打って、止まりかけた手の動きを再開する。

「父さんは、たぶん……今思うと、不器用な人なんだと思う。昔は全然そうは思えなくて、曲者にしか見えなかったけど」
「曲者って」
 
笑っていいものか迷ったけれど、親に言うような言葉じゃないチョイスに、思わずツッコんでしまった。