「撫でて」
「え?」
「落ち込んでるから、俺、今。だから、頭撫でて」
「えー……と、子どもなの? 相良くん」
「いいから」
 
本当に子どもだ。
私は呆れた胸の内を鼻息であらわにして、「はいはい」と言って彼の頭を撫でる。

いつもツンツンしている髪は、雨のせいだろうか、それほど跳ねてはいなくて、触れるととても柔らかかった。
 
不思議だ。
男の子なのに、やっぱりこんなふうに触れられるって、どれだけ意識していないかという証明になる。

「大丈夫大丈夫。ちょっとずつちょっとずつ」
「なに? それ」
「私が小さい時、ピアノがうまく弾けない時に、お母さんがそう言って頭を撫でてくれたの」
「……へぇ」