「いいよいいよ。それにもう終わったよ。ほら」
 
日誌を見せると、園宮くんは無表情をほんの少し複雑そうにした顔になる。

「そっか、ごめん。いつもありがとう。明日は……」
「だから、ホントにいいよ。もう習慣だし、気にしないで。じゃあ、今日だけ先生に持っていってくれる?」
「わかった」
 
そう言って、日誌を受け取った園宮くん。

踵を返してそのまま教室を出ていくのかと思いきや、「あ」と言って立ち止まって振り返り、
「なんか最近、ピアノ、楽しそうな音が聞こえるけど」
と言ってきた。

「えっ」
 
驚いた私は、慌てて、
「あー……うん、あれ、単音で弾いたり、ゆっくり弾いたりしてるやつでしょ? あれは……気晴らしっていうか、息抜きに……ね、たまには」
と苦しい言い訳をする。