顎に手を置いてニヤニヤしている相良くんに、私は平然と返事をするも、再び「ふーん」と大きく頷かれるから、いい気はしない。

「自分に似てるやつを好きになるんだ?」
「好きだとは言ってない。それに、べつに似てないし」
「そう?」
「園宮くんは文武両道で、それを鼻にもかけてないし、誰にでも平等な態度だし、思いやりもあるし、パーフェクトな……」
 
話しながら、はた、と固まって、相良くんを見る。
彼はさっき以上にいやな笑い方をしていた。

「それで?」
「それだけよ。とにかく似てないし、好きだと思うのがおこがましいくらいだわ。尊敬はしてる」
「へぇ」
 
相良くんの笑顔が気持ち悪いから、私はピアノのところまでいって、鍵盤蓋を開ける。
屋根も開けようかと思ったけれど、音が響きすぎて練習試合の妨げになってはいけないと思ってやめた。