「でさ……」

私の目をしっかり見て、説得を始める中野くん。

なんか、かわいそうになってきた。ていうか、ここまでされたら断りづらいじゃないか。

「あー……、うん。いいよ」

「あっ、こっちこっち、桐谷!」

私の言葉にかぶせて、隣の席の男子の集団のひとりが声をあげた。

……え。

その声に反応して顔を向けたら、少し離れたところで振り返ったばかりの桐谷先輩と目が合った。

「マジで!? やった、ありがとー、水島さん」

感激して身を乗りだし、私の手を握る中野くん。ぎょっとした私はそのまま固まり、握られた手をぶんぶんと上下されるがまま。
そして、視界に入ったのは、隣の集団の席に座った、昨日告白した相手。

「どこ行こっか? どこ行きたい?」

舞川さんがOKするかどうかはわかっていないのに、中野くんは目をキラキラさせて聞いてくる。声が大きいから、たぶん桐谷先輩にも聞こえている。ていうか、視界にも入っているはず。

気まずい。なんか、私、昨日フラれたから他の男の人探そうとしている人みたいじゃん。