そう言いながらも、内心嬉しい自分がいる。だってそれって、桐谷先輩と感覚が似ているっていうことだから。
「そうだね」
桐谷先輩が、なんとなく満足げな顔で笑ったような気がした。夕方の光を直接左頬に受けて、まるでドラマにでも出てきそうな、きれいな顔だ。
「クレヨンが友達だったんだ」
「はい?」
急に話が変わったもんだから、私は数回瞬きをして、聞き返すように顔を傾けた。
「親も家にいること少なかったし、友達づきあいも好きじゃなかったし。毎日絵を描いてた。描いてたっていうか、色で遊んでた」
「…………」
あぁ、小さいときの話……。
「人間と違って、絵は裏切らないからさ。頭の中の抽象が、自分の力量相応にキャンバスに反映される。逆に言うと、絵の前では嘘がつけない」
「…………」
「すごくシンプル。だから、好き」
そう言ってふわりと笑った桐谷先輩。
表面的というか、あまり自分の領域に他人を踏みこませないような雰囲気の所以がわかったような気がした。この人にとっては、人間より絵なんだ。信用に値するものが。
「そうだね」
桐谷先輩が、なんとなく満足げな顔で笑ったような気がした。夕方の光を直接左頬に受けて、まるでドラマにでも出てきそうな、きれいな顔だ。
「クレヨンが友達だったんだ」
「はい?」
急に話が変わったもんだから、私は数回瞬きをして、聞き返すように顔を傾けた。
「親も家にいること少なかったし、友達づきあいも好きじゃなかったし。毎日絵を描いてた。描いてたっていうか、色で遊んでた」
「…………」
あぁ、小さいときの話……。
「人間と違って、絵は裏切らないからさ。頭の中の抽象が、自分の力量相応にキャンバスに反映される。逆に言うと、絵の前では嘘がつけない」
「…………」
「すごくシンプル。だから、好き」
そう言ってふわりと笑った桐谷先輩。
表面的というか、あまり自分の領域に他人を踏みこませないような雰囲気の所以がわかったような気がした。この人にとっては、人間より絵なんだ。信用に値するものが。