「好きで無表情なわけじゃないよ」

感情を表に出すのが苦手なだけだ。笑顔を作るのも得意じゃない。

「わりと可愛いんだからさー、もったいないよ。どうせ、その3年のニャンニャンタイムを目撃しても、表情ひとつ崩さなかったんでしょ?」
「眉毛はピクリとしたと思うよ」
「キャッとか言って頬染めてこそ女の子でしょ」
「涼子だってそんなことしないくせに」
「ハハッ。“うわーっ”て叫びそう」

涼子は屈託のない顔で豪快に笑う。

「……で? 今日も美術室寄ってみるの? 憧れのなんとかハルカ嬢を拝みに」
「うん。そうしようと思ってる」

そうだ。私にとっては、恋愛よりもまず、それが先にすることだ。