「…………」

言葉をなくしてしまった私は、他の部員と同じように、キャンバスの前で佇んだまま固まる。

「最低だ、こんなことするなんて。いったい、誰が……」

いつもニコニコしている部長も、この状況では、眉間にしわを寄せ、怒りをあらわにしている。

あんなに楽しそうに、あんなに夢中に描いていた絵。それなのに、なんでこんな……。
私はきゅっと下唇を噛んだ。怒りと悲しさで、目頭が熱くなる。
許せない。こんなひどいことをするなんて……。

「……なにしてんの? 俺の絵に群がって」

そのとき、美術室のドアが開いて、このキャンバスの主の声が静かに響いた。

「……あ」

みんな、なにも答えられない。部長が、「……桐谷の絵が……」と言いかけたときには、すでに桐谷先輩は近くまで来て、固まっている私たちの隙間から自分の絵をしっかりと目に入れていた。

「うわ。悲惨」

もっと驚くかと思っていたけれど、彼は乏しい表情で抑揚のない声を出した。

「俺が来たときには、すでにこんなことになっていて……」