美術室の前まで来た私は、走ってきたわけではないのに、息を短く吐き、深呼吸を2回してからドアに手をかけた。
何人かすでに来ているのが外からでもわかっていたので、
「こんにちはー。お疲れ様です」
と、いつものように挨拶をする。
「…………」
……あれ?
入って一歩目で、なにか変な雰囲気を察知した。部長とまり先輩含めて6人の先輩部員が、美術室のうしろのほうで固まって立っている。
いつも笑顔なのに神妙な面持ちのまり先輩が、私が入ってきたことに気付き、ようやく「あ、水島ちゃん」と声を出した。
「……どうかしたんですか? なにか……」
言いながらみんなのところに近付く。そして近付くにつれて、あ、桐谷先輩のイーゼルがあるところだ、となんとなく思った。
「……え?」
最初見たとき、イーゼルにかけられているのがキャンバスだってわからなかった。
「なにこれ? なんで……」
だって、あまりにもぐちゃぐちゃだったから。黒の絵の具で上から荒く塗りつぶされ、カッターかなにかでキャンバスに切りこみが入れられている。葉脈を押しあてて描かれた一部分が辛うじて見えなければ、あの、繊細できれいで光を伴った桐谷先輩の絵だなんて到底思えない。
何人かすでに来ているのが外からでもわかっていたので、
「こんにちはー。お疲れ様です」
と、いつものように挨拶をする。
「…………」
……あれ?
入って一歩目で、なにか変な雰囲気を察知した。部長とまり先輩含めて6人の先輩部員が、美術室のうしろのほうで固まって立っている。
いつも笑顔なのに神妙な面持ちのまり先輩が、私が入ってきたことに気付き、ようやく「あ、水島ちゃん」と声を出した。
「……どうかしたんですか? なにか……」
言いながらみんなのところに近付く。そして近付くにつれて、あ、桐谷先輩のイーゼルがあるところだ、となんとなく思った。
「……え?」
最初見たとき、イーゼルにかけられているのがキャンバスだってわからなかった。
「なにこれ? なんで……」
だって、あまりにもぐちゃぐちゃだったから。黒の絵の具で上から荒く塗りつぶされ、カッターかなにかでキャンバスに切りこみが入れられている。葉脈を押しあてて描かれた一部分が辛うじて見えなければ、あの、繊細できれいで光を伴った桐谷先輩の絵だなんて到底思えない。