クスクスと笑いながら、桐谷先輩の肩に手を乗せてそう言う彼女。私は見おろされているということも手伝って、ひどく侮辱されているような気がした。スカートについた草を払い、なにも言わずに立ちあがる。

「今日バイト休みなんだったら、一緒に遊ぼうよ」

まるで私のことはいないものとして、桐谷先輩にくっつきながら話している。

あー……。この人も、桐谷先輩のこと、好きなんだ。彼女になれないから、せめて自分が取り巻きの中では一番だと、まわりに知らしめようとしているんだ。

そう理解するも、胸のなかに立ちこめる霧のようなモヤモヤは、なかなか晴れてくれない。視線も、桐谷先輩の肩に置かれた彼女の手から離すことができない。

「今ね、この人と話してんの」
「は?」
「それに、今日はこのあと絵描くから。悪いけど他あたってよ」

桐谷先輩が、さらりと彼女にそう言った。

「そ、そんなの……」
「“そんなの”がしたいの。また今度ね、ミサキ」

目を見開いて驚く彼女の手を、ゆっくりと剥がす桐谷先輩。これ以上の誘いは無駄だと示した。