桐谷先輩を見おろしながらそう言うと、見あげる彼は一瞬だけ表情を止めて、
「……よく見てんね、水島さん」
と言った。

「どういたしまして」
「“ありがとう”って言ってないし」

そう言ってふっと笑った彼は、葉っぱに目を戻す。私は、なんとなくもう少し話をしていたいと思ったけれど、とりたてて話題が浮かばなかったので、教室へ戻ろうと、「それじゃ」と言いかけた。

「ねぇ」

葉っぱに目を落としてしゃがんだままの桐谷先輩の声に、私は方向転換した体を戻す。

「はい?」
「この種類の葉っぱと、こっちの種類の葉っぱ、どっちがいいと思う?」

きょとんとした私に、おいでおいでと手招きする桐谷先輩。葉っぱを見ろというので、私も彼の横に身をかがめる。

「水島さんなら、どっち選ぶ?」
「うーん……」

正直どちらでもいいんじゃないかな、と思うけれども、葉脈が太くて生命力が溢れているものよりも、もう片方の筋が細くてきれいな葉のほうがいいような気がして、人さし指をそちらに差す。