「なにしてるんですか?」
数日後の放課後。
日直だった私は、先生に日誌を届けた帰りに、中庭でうずくまっている桐谷先輩に遭遇した。
「なにって、見ればわかるでしょ?」
「なんですか?」
「葉っぱを吟味して拾ってんの」
そう言った桐谷先輩のしゃがんだ足もとには、数枚の選ばれし葉っぱたちが重ねられている。
「わかりませんよ」
私は無表情でそう返しながら、やっぱり桐谷先輩は変な人だと思った。
「今描いてる絵に使うんですか?」
「そう。あの絵、葉っぱの葉脈みたいな繊細さを部分部分で出したいから」
「あー、やっぱり……」
彼の今描きかけのキャンバスを頭の中の額縁にかけると、私は自然とそうつぶやいていた。
「やっぱり、って?」
「黄色がバン、て前面にきてて大胆で強く見えるけど、細かいところ、ホントに細かく描いてたから。前取った葉っぱも使ったって言ってましたもんね。あの細かい筋がアクセントになってて、脆さっていうか儚さみたいな繊細な印象、たしかに受けましたもん」