「沙希ちゃん」
放課後の美術室。私より数分遅れで顔を出した舞川さんが、油絵の準備をしている私の横に立つ。今日は1年生だけはやく終わったから、まだ私たちふたりだけだ。
「あのさ、沙希ちゃんて、も、もしかしてさ……」
美少女がほんの少し頬を染めて、言いづらそうに私を見る。昨日の今日だから、言われることがなんとなくわかる。ふたりが話しているところを邪魔したんだから、本人だけじゃなくて、舞川さんにも勘付かれて当然だ。
「あ……昨日はごめんね。私、あの作品のファンで、それでなんか作品のこと独り占めしたいような気持ちになって」
「え?」
私の言葉に、舞川さんが心底驚いた顔をした。
「えーと……、桐谷先輩本人じゃなくて、作品の?」
「うん。もちろん作者の先輩のファンでもあるけど、あの作品は特別思い入れがあって」
昨日先輩に話したように、舞川さんにも嘘ではない理由を語る。
「そ……うなん、だ」
舞川さんは驚きの表情から、ふっと安堵の表情になり、「なんだ、よかった」と笑った。
その様子に、私は嫌でも気付く。舞川さんが、先輩に対してファン以上の気持ちを持っているということに。
放課後の美術室。私より数分遅れで顔を出した舞川さんが、油絵の準備をしている私の横に立つ。今日は1年生だけはやく終わったから、まだ私たちふたりだけだ。
「あのさ、沙希ちゃんて、も、もしかしてさ……」
美少女がほんの少し頬を染めて、言いづらそうに私を見る。昨日の今日だから、言われることがなんとなくわかる。ふたりが話しているところを邪魔したんだから、本人だけじゃなくて、舞川さんにも勘付かれて当然だ。
「あ……昨日はごめんね。私、あの作品のファンで、それでなんか作品のこと独り占めしたいような気持ちになって」
「え?」
私の言葉に、舞川さんが心底驚いた顔をした。
「えーと……、桐谷先輩本人じゃなくて、作品の?」
「うん。もちろん作者の先輩のファンでもあるけど、あの作品は特別思い入れがあって」
昨日先輩に話したように、舞川さんにも嘘ではない理由を語る。
「そ……うなん、だ」
舞川さんは驚きの表情から、ふっと安堵の表情になり、「なんだ、よかった」と笑った。
その様子に、私は嫌でも気付く。舞川さんが、先輩に対してファン以上の気持ちを持っているということに。