「この前も……火曜日でしたね」
「なにが?」

間を埋めようと声をかけると、窓側に体を預け、カランと口の中で飴の音をさせる桐谷先輩。

「こうやって、お話をしたのが」
「あぁ」

一番うしろの席は若干高くなっているため、私が軽く振り向きながら話すと、ちゃんと彼が視界に入る。桐谷先輩は、軽く顎をあげて、
「火曜日、バイト先が定休日だから」
と言った。

「え? バイトしてるんですか?」
「うん。親戚の叔父さんの喫茶店。火曜日以外はシフトバラバラだけど」

あぁ、だからか。まり先輩が、桐谷先輩はたまにしか来ないと言っていたのは。
勝手に納得して、小刻みにうなずいていると、
「ねー、水島さん」
と、窓に頭を預けて斜めになった顔の桐谷先輩が、無表情で名前を呼ぶ。
やっと名前を覚えてもらえたようだ。

「わっ!」
「え?」
「…………」
「…………」

急に驚かすような声を出した桐谷先輩に、私は彼の目を見たままきょとんと固まる。

「なに? ……ですか?」
「……ホント、無愛想っていうか、動じないよね、水島さん」

つまらなさそうな顔をして、鼻から息を吐く桐谷先輩。

「は?」
「いや、いつも表情が変わらないから、面白くないなーと思って。最初会ったときもだったし」