「油絵を……やってみたいです」
気付けば、そう言っていた。少し驚いた表情を見せた部長は、すぐに笑顔になって、
「お、油絵なら任せて。基本は僕が教えるよ」
と言った。
油絵の画材一式についての説明が終わったころには、すでに20分が経過していた。そのあと、モチーフはどうしようか、なんて部長と話していたとき、カラカラカラ、と美術室のドアが開く。
「こんにちはー」
すぐ近くに座って果物のデザイン画を描いていた2年の女子が、緊張気味に頭をさげた。すると、
「どーも」
と、そっけなく言ってツカツカと入ってくる男。
……桐谷遥だった。
「こんにちは」
一応先輩なので、横を通ろうとした彼に、軽く会釈をする。
「……あー、どーも。えーっと」
「水島です」
「水島さん」
それだけ言って、興味なさげに通り過ぎ、自分のキャンバスの前に座った桐谷遥。名前を覚えてもらってなかったことに、バスでまで話をしたのにと、なんとなく腹立たしいような空しいような気持ちになった。
気付けば、そう言っていた。少し驚いた表情を見せた部長は、すぐに笑顔になって、
「お、油絵なら任せて。基本は僕が教えるよ」
と言った。
油絵の画材一式についての説明が終わったころには、すでに20分が経過していた。そのあと、モチーフはどうしようか、なんて部長と話していたとき、カラカラカラ、と美術室のドアが開く。
「こんにちはー」
すぐ近くに座って果物のデザイン画を描いていた2年の女子が、緊張気味に頭をさげた。すると、
「どーも」
と、そっけなく言ってツカツカと入ってくる男。
……桐谷遥だった。
「こんにちは」
一応先輩なので、横を通ろうとした彼に、軽く会釈をする。
「……あー、どーも。えーっと」
「水島です」
「水島さん」
それだけ言って、興味なさげに通り過ぎ、自分のキャンバスの前に座った桐谷遥。名前を覚えてもらってなかったことに、バスでまで話をしたのにと、なんとなく腹立たしいような空しいような気持ちになった。