「どう? 学校は」

向かいあわせでテーブルをはさみ、お母さんとふたりで夕食。カチャ、とお箸が皿に当たる音が際立つのは、食事中にはテレビをつけないことになっているから。

「べつに……普通だけど」
「普通って。なにかしらあるでしょ、毎日同じじゃないんだから」

なにかしら……ありました、たしかに。でも、言えません、お母さんには。

「じゃあ、塾はどうだった?」
 
お母さんに内緒で休んだ罪悪感でほんの少しドキッとした私は、それを気取られないように、
「普通」
と答え、お味噌汁をすすった。
お母さんはあからさまに不満げな顔をして、これみよがしにため息をつく。

「お姉ちゃんはいろいろ話してくれてたのに」

ほら、でた、ふた言目には“お姉ちゃん”。お姉ちゃんは生徒会とかやってたし、友達も多かったから、日々の話題に事欠かなかった。