「はーーーっ」

美術室を出て、いくらか離れると、ようやく大きく息を吐き出す。そして、やらしいのはどっちだ! と心のなかで毒づき、早歩きを続けた。

赤い上履きの色で、ふたりとも3年生だとわかった。3年だったら好き放題していいとでも思っているのだろうか。ていうか、高校生ってこういうのが普通なの? ありえない。

まだ履き慣れない緑の固いスリッパを外履きのスニーカーに履きかえ、私は昇降口を出た。そして、春のぬるい風を切って高校前のバス停へと向かう。歩きながら、目に焼き付いてしまったさっきの光景と彼の言葉を、頭の隅へ無理やり追いやった。

塾、ちょっとはやく着いちゃうけど、これといってすることもないから、次のバスに乗って行こう。

校門を通り過ぎてバス停へと曲がる直前、校舎の方を振り返る。視線の先は、美術室だ。

明日なら……会えるだろうか?