「合ってるんなら返事しようよ」
「はい」

もう少し顔をひねり、盗み見るようにチラリと彼を見て、返事をかぶせる。

「続くね、偶然」
「そうですね」
「偶然?」
「偶然です」
「そう」

フッと軽く吹き出す声。“憧れの人”発言をしたから、ストーカーの疑いでもかけられていたのだろうか。嫌な言い方をする男だ。

「家、こっちなんですね」
「うん、3丁目」
「えっ、私2丁目」

やはり近くに住んでいたんだ。世間はせまい。

普通に座りながら話す桐谷先輩に、顔だけ窓の方へ向けながら話す私。あの”桐谷遥”とこんなふうに話をすることになるとは思わなかった。というか、いまだに気持ちが追いつかず、私の中の“桐谷遥”と、うしろの席の“桐谷遥”が合致しない。カーブの多い道で体が斜めになりながら、窓に映る気難しい顔の私が目に入った。

「水島さんさ、俺のファンなの?」
「…………」

きた。絶対聞かれると思っていた。