「あのさ、沙希ちゃん。もしかして、桐谷先輩となにかあった?」

唐突な質問に、私は「えっ?」と素っ頓狂な声を出してしまった。

「えー……っと……」
「……ふ」

ふふふっと笑って、舞川さんは「わかりやすいね、沙希ちゃん」と言った。舞川さんの気持ちを知っている私は、ただのファンだと嘘をついていたことも含めてうしろめたい気持ちになる。

「私はとっくにフラれてるから、気にしないでね」

 私の心を読んだのだろうか、舞川さんはすかさずそう言った。私は、「えっ!?」と声をあげる。

「沙希ちゃんに私の気持ち言ってすぐのころ。見事に玉砕」
「……そ……そうだったんだ」
 
信じられなかった。こんなパーフェクトな女の子の告白を、本当に断る人がいるなんて。

「だから、はやく仲直りして、そして」
「……舞川さん」
「え?」
「実は私もフラれてる」
 
あと出しで言うのを申し訳ないような気持ちで白状すると、舞川さんは、「ええっ!?」と言ってオーバーリアクションをした。

「なんで驚くの?」
「だって…………」

驚かれたことに驚いていると、舞川さんは不可解な顔をして首をひねる。

「桐谷先輩のスケッチブック、一冊全部沙希ちゃんのデッサンなんだもん」