「あ、そうだ。来週の土曜日、ヒマ?」
「今のとこなにもないけど。なにかあるの?」
「ナカに頼まれてさ、また動物園に行ったメンバーで映画にでも行こうって」
「……それ、遠回しに私に舞川さんを誘えって言ってるの?」
「まぁ……そうだろうな」

取りとめのない世間話をしていると、美術室についた。廊下側に続く窓越しに中が見えるから、私も諏訪くんもなにげなくそちらへ目を移す。

「あ。いるじゃん、センパイ」
「…………」

先輩というワードに、私の心臓は跳ねた。すでに美術室の中にいたのは、町野先生に平山部長、まり先輩、そして桐谷先輩……。

「大丈夫なの? 水島」
「うん……」

そう言いつつ心拍数が速まる私は、怪訝そうな顔の諏訪くんにバイバイを言って美術室のドアを開けた。

「……あ、の、こんにちは」
「こんにちはー、おつかれ、水島ちゃん」

まり先輩がにこやかに手を振る。話をしていたらしい先生と部長と桐谷先輩は、軽く挨拶を返して、また話を再開させた。