「ちょっと、ぜんぜん焼けてないじゃん、沙希」
「涼子はちょっと焼けすぎじゃない? 日焼け止め塗ったの?」
「塗ったよー。塗ってこれだよー」

涼子の無駄にデカい声が教室に響く。新学期の空気は独特で、みんな浮足立ってソワソワして見える。私も例にもれず、なんとなく気がそぞろだった。

今日は終業式と同じで午前で終わり。始業式を終え、教室で先生の2学期の話が終われば、みんなそれぞれ部活や遊びや家へと散り散りになった。私は夏休み中最後に部活に顔を出したときに持ち帰っていた画材を手に、美術室に戻してから帰ろうと、階段をおりていた。

「水島」

背後から声をかけられて振り向くと、諏訪くんの姿。十数段上から軽やかにおりてくる彼も、けっこう焼けていた。

「祭り以来だな」
「そうだね。元気?」
「見てのとおり」

横に並んだ諏訪くんは、私に合わせて階段をおりる。

「帰るの?」
「ううん、美術室」
「ふーん。俺も部活。じゃあ途中まで」

少し遠回りになるけれど、美術室の前を通っても体育館に行くことができる。諏訪くんは首を回しながら、「あー、だりーな部活」と言いながら、階段をおりきっても私についてきた。