「うわ。無表情に磨きがかかってる」
「意味がわかんないし、それ」
昼休み。涼子とお弁当を一緒に食べようと、机をくっつける。
「なに? まだ見れないの? ハルカ嬢」
「うん」
そうなのだ。あれから毎日美術部に通っているけれど、ぜんぜん桐谷さんに会えない。30分しかいられないから、仕方ないといえば仕方ないのだけれど。
「絵が描き進められていたから、私が帰ってから来てるみたいなんだけど」
「ふーん」
「あんまり興味ないでしょ?」
「うん」
正直な涼子の頭を小突くと、涼子は笑って「イテッ」と頭を押さえた。
「ていうかさ、そんなに会いたいんだったら、一日くらい塾サボって最後まで美術室にいたら?」
「え?」
ようやくお弁当箱を開いて、まずはウィンナーから、と箸ではさんだ途端、スルッと落ちる。
その発想はなかった。でも……。
「うーん……」
頭の中にお母さんの顔がよぎった。……怒った顔の。