私はつながりの見えないふたりに、生唾を飲んだ。教室のドアに隠れて、そっとふたりの様子をうかがう。

「黙ってたら、沙希ちゃんに危害を加えないって言いましたよね? だから私、ミサキ先輩が犯人だってこと……」
 
——え? 犯人て……。

驚いてドアを支える手に力が入ってしまった私は、ガタ、とわずかに音を立ててしまった。その途端、ふたりが瞬時にこちらを振り向く。

「…………あ」
「沙希……ちゃん」
 
教室内が静まりかえり、掛け時計の秒針だけがやたらと耳に響いた。舞川さんは口を押さえ、どんどん複雑そうな顔になっていく。

「水島沙希さん、お久しぶり」

沈黙を破ったのは、冷ややかな表情と声でそう言ったミサキ先輩だった。かと思うと、彼女はなにが面白いのか「アハハハッ」と笑う。

「昨日も遥と楽しそうに話してたよね?」
「…………」

笑っているのに、そう言って向けられた視線がとてつもなく冷たくて、私は背中に寒気が走った。
 
ボブでサラサラの髪を揺らし、つかつかと私の方へ歩いてくるミサキ先輩。目の前まで来ると、彼女の身長のほうが高くて、私は少しだけ顎をあげた。

「彼女じゃないくせに彼女面して、何様なの? あんた」
「え……?」
「言ったでしょ? 私。遥にハマるなって」
「…………」